2010年2月7日日曜日

インド回想記(2)ガンディーの思想


 私たちのNPOと以前から縁のあったインド中央政府の前経済計画大臣ラジャセカラン氏と懇談する機会を得た。腰の低い人当たりの柔らかな好人物である。

彼は現在、自ら設立した恵まれない子どもたちに教育の場を提供するNGOを娘さんに託し、農村開発、環境保全、人権保護が専門で、広く科学研究や人材開発にも貢献、世界的に活躍をしている人物である。

彼は、昨年から、貧困層に行き渡らないインドの食糧問題を少しでも改善しようと、政府を始めとしたインドの主要人物8000人と、政府、大学、研究機関、各企業の3000団体に向けて1週間に一度断食をしようと呼びかけている。我々にもその意義を熱く語ってくれたが、提案先の多くの個人、団体から、賛同する返答が返って来ていると言う。

この呼びかけのすごさは、断食で浮いた費用を寄付として集めるなどと言うものではなく、ただ、各自で断食をして欲しいと言うところにある。そのことによって、自ずから消費されずに済んだ食糧が、不足している貧困層に少しでも届きやすくなる。と言う考え方なのである。

かつて、ガンディーは、イギリスの植民地であったインドを、この断食によって解放した偉業を成し遂げたことで知られる。しかし、いくらそのような素晴らしい効果のあった断食と言えども、時代は、21世紀である。人々は、生活の豊かさを享受することに夢中になっているこのご時勢に、こともあろうに断食を呼びかける。そして、それに多くの人が賛同し、行動を共にしようと応えている。

日本で、あるいは、他の先進国でこうした呼びかけをしたら、一体、どれだけの人が賛同し、実際に行動を起してくれるだろうか?

インドには、まだまだ、こうした提案に応えるだけの心意気と人間としての大きな度量がある。そんなガンディーの思想が未だに息づいているインドに大きな感動を覚えた。